体が乾燥して血液が濃くなりやすい機内の環境は、血栓ができやすい状態です
旅行の代表的な移動手段として、飛行機や電車、バスなどが挙げられますが、機内や車内で長時間座りっぱなしの状態で、足を動かさないでいると、足から心臓に向かって血液が流れにくくなります。
そのために血管内に血の塊、すなわち「血栓」ができやすい状態になります。血栓が肺に運ばれると、肺の血管に詰まり、胸痛や息苦しさを感じるなどの症状が現れ、最悪のケースでは死に至ることもあります。これが、「ロングフライト血栓症」です。
病名にフライトの文字が入っているのは、飛行機の機内は他の交通手段に比べて空気が非常に乾燥しているため、体が乾燥し、血液の濃度が濃くなりやすい環境となっており、血栓ができやるい環境にあるためです。
据わりっぱなしの状態がどれくらい続くとリスクが高くなるのかという目安としては、6時間以上とされています。日本からアメリカやヨーロッパなどの人気観光地などはまず6時間以上かかるので、海外旅行が好きな日本人は世界の中でもロングフライト血栓症になりやすいといえます。
以前は「エコノミークラス症候群」として知られていた病気ですが、ビジネスクラスやファーストクラスの座席でも長時間座っていると発症するので、誤った印象を取り去るために名称の変更が行われました。
健康な人でも50歳以上になると血管のどこかが傷んでいることも多く、血栓ができやすいので注意が必要です。そのほか、死亡が血管を圧迫して血液の流れが割るなりやすい肥満の人、腎臓の機能障害で人工透析を受けている人、産後1ヶ月以内の人、大きな手術を受けて2〜3ヶ月以内の人も注意が必要です。
血栓ができるのを予防するためには、2〜3時間に1回は席を立って歩くようにしましょう。機内の遠いほうにあるトイレまで歩いたり、非常口近くの広めのスペースで軽く屈伸するのも効果的です。旅行関連用品を扱う店では、足の血行をよくする「フライトソックス」が販売されているので、こういったものを利用するのもよいでしょう。
3人がけの座席の真ん中なので、頻繁に席を離れるのに気を使うという場合は、座席に座ったまま「かかとを上下に動かす」あるいは「膝を上下させる」、「深呼吸をする」などでも血栓を予防することができます。
ロングフライト血栓症は、機内や飛行機を降りた直後に起きるとは限りません。場合によっては2週間近く経ってから発症することもあります。長時間のフライト後、2週間くらいのあいだに、片足のむくみや痛みが出てきたら、大きな病院の循環器科や血管外科で医師の診察を受けるようにしましょう。
乗り物での長時間の移動による「乗り物酔い」への対策
旅行の目的地が国内外であるにかかわらず、移動手段として飛行機やバス、船などを利用する方は多いと思いますが、乗り物酔い(眩暈や吐き気)のために旅を満喫できないという人は少なくありません。
人間は昔から平面を移動して生活をしてきましたが、垂直方向の移動を経験してこなかったので、立ての動きに拒否反応が出てしまうのです。電車や飛行機で乗り物酔いはほとんどしないのに、立て揺れが多い船やバスで酔ってしまうのはこのためです。
乗り物酔いは子供と女性に多い傾向があります。修学旅行のバス移動で気分が悪くなった、あるいは気分が悪くなった友人がいたという記憶がある方は多いのではないでしょうか? ただし、個人差が大きく、酔わない人はどんな乗り物でどんな揺れを経験しても問題なく、逆に駄目な人は普通の乗用車でも気分が悪くなってしまいます。
お腹一杯の状態で乗り物に乗ると、酔いやすいという医学的な統計があります。乗り物に乗る前は食事の量をいつもの6〜7割程度にしておきましょう。また、酔い止めの薬を服用する場合は、乗り物に乗る2時間前に1回服用し、乗り込む直前にもう一度飲むのが効果的とされています。酔う前に飲むのが大切で、症状が出てから飲んでも意味は全くありません。
もし気分が悪くなってしまったら、窓を開けて新鮮な空気を吸うようにしましょう。ベルトや首周りは少し緩めてリラックスできる状態にします。冷たい水を飲むと、楽になることがあります。気を紛らわせたいからと本などを読むのは逆効果です。